認知症で寝てばかりいる理由は?よく寝る理由や注意点、対処法を解説します

認知症で寝てばかりいる理由は?よく寝る理由や注意点、対処法を解説します

認知症は高齢者にありふれた疾患で、厚生労働省によれば2022年には日本の認知症高齢者は約443万人となりました。認知症では記憶障害や徘徊だけでなく睡眠の問題も頻発し、睡眠障害は本人だけでなく介護者にも大きな負担となりがちです。介護をしている家族にとって、認知症の親が「最近寝てばかりいる」と感じる状況は大きな不安材料でしょう。

本記事では、認知症の患者さんがよく眠る理由とその医学的背景、睡眠時間が長すぎる場合の注意点や健康への影響、そして寝てばかりいる際の対処法について、Q&A形式で解説します。

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認知症の患者さんがよく眠る理由

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まず、認知症の方が日中によく眠ってしまうのはよくあることなのか、そしてその主な理由について見ていきましょう。

認知症の家族が寝てばかりなのですが、よくみられる症状ですか?
認知症の方が日中に長時間眠ってしまうのは決して珍しいことではありません。 認知症には初期症状の一つとして睡眠障害があり、軽度認知障害では8.8~59%に睡眠障害がみられるという報告もあります。夜に十分眠れないため昼夜逆転が起こり、結果として日中に強い眠気を感じてウトウトしてしまうのです。

この昼夜逆転は認知症の方に見られる症状であり、介護者にとっても負担となる場合があります。さらに、認知症が進行した場合には睡眠パターンが変化し、必要以上に長く眠ってしまう過眠の状態が現れることもあります。このように、認知症によって睡眠の症状は変化しうるため、寝てばかりいるという状態自体は認知症の方にはよくあることだと理解しておきましょう。
認知症でよく寝る理由を教えてください。
認知症の方に日中の強い眠気や長時間の睡眠がみられるのには、いくつかの医学的理由が考えられます。まず、認知症の初期から脳の体内時計機能に変化が生じるため、睡眠と覚醒のリズムが乱れやすくなります。その結果、夜間に十分眠れず昼夜逆転を起こし、日中に過度の眠気が出てしまうことがあります。

また、認知症のタイプによっては夜間の睡眠障害に関係なく、日中に過眠傾向が現れる場合もあります。例えば、レビー小体型認知症では日中の異常な眠気が特徴的で、アルツハイマー型認知症より頻繁に強い眠気が生じやすいことが指摘されています。こうした傾向は、レビー小体型認知症と病理学的に同じ機序で脳の細胞に障害を受ける、パーキンソン病でもこのような傾向がみられます。

さらに、認知症の周辺症状として無気力状態が起こる方がいます。認知症の初期症状の一つである無気力状態により意欲が低下すると、脳が興奮しにくくなり、結果としてうとうととした傾眠傾向が見られます。この場合、実際には浅い眠りや居眠りでも周囲からは常に寝ているように見えることがあります。

以上のように、睡眠覚醒リズムの乱れ、認知症の種類や脳細胞の変化に応じた睡眠障害、意欲低下による活動性の低下などによって、認知症の患者さんは起きている時間が少なくよく眠るように見えることがあります。加えて、高齢者では加齢や併存疾患、薬剤の影響も重なり、睡眠過多の傾向が一層目立ってしまう場合があります。

認知症患者さんの睡眠時間が長すぎる場合の注意点

認知症のご家族が必要以上に長く眠っているとき、介護するうえで注意すべきポイントがあります。ただ長時間寝かせておけばよいというわけではなく、健康や生活への影響に目を配ることが大切です。また、寝すぎることが認知症の進行に影響を与えるのか、そしてせん妄という一時的な混乱状態への対処についても理解しておきましょう。

寝てばかりいる場合、日常生活に及ぼす悪影響を教えてください。
高齢の方が一日中ベッドで過ごす状態が続くと、日常生活への悪影響が懸念されます。それが身体機能の低下です。長時間横になっていることで筋力や関節の可動域が落ち、立ち上がる力やバランス能力も衰えてしまいます。

その結果、ふと起き上がった際に転倒しやすくなったり、寝返りが少ないことで褥瘡(床ずれ)ができたりすることがあります。特に認知症の方の場合、自身で痛みや違和感を訴えることが難しいこともあるため、皮膚の様子や体調の変化を周囲が注意深く見守る必要があります。

また、日中にずっと寝ていると夜間に目が冴えてしまい生活リズムが崩れるため、介護者側の生活にも負担がおよびます。ご家族が夜間に何度も起こされるケースもあり、介護疲れにつながることも考えられます。
寝ている時間が長いと認知症が悪化しますか?
長時間の睡眠や活動量の低下は認知症の悪化につながる可能性があります。

日中にほとんど活動しない状態が続くと脳への刺激が減り、認知機能の低下を助長しかねません。また、身体機能の低下により自力でできることが減ると精神的な刺激も少なくなり、結果として認知症状の進行に拍車がかかり悪循環に陥るリスクがあります。

ただし、一概に「睡眠時間が長い=認知症が悪化する」と断定できるわけではありません。個々人の健康状態や病状にもよりますが、少なくとも覚醒している時間に適度な刺激や活動がない状態は脳と身体にとってよくないといえるでしょう。
認知症の家族が寝てばかりでせん妄が生じています。対処法を教えてください。
認知症の方が長時間眠りがちになると、もうひとつ注意したいのがせん妄と呼ばれる一時的な意識混濁・混乱の状態です。せん妄では、突然興奮したり幻覚が現れたり、逆にぼんやりして反応が鈍くなることもあります。寝てばかりいる方はせん妄状態になる可能性があるため注意が必要です。
もしご家族がせん妄のような様子を示した場合、まずは慌てず落ち着いて対応することが大切です。 大きな声で叱ったり否定したりせず、安心できるよう静かな環境で見守りましょう。幻覚の内容に対しては無理に否定せず「そうなんだね」と受け止めつつ、安全を確保します。せん妄は一時的なものがほとんどで、適切な治療やケアで改善する可能性があります。長期的な対応に困る場合は、医療機関への相談を検討してもよいでしょう。

認知症の患者さんが寝てばかりいる際の対処法

では、認知症のご家族が日中寝てばかりいる場合、介護者としてどのように接し、どのような工夫ができるのでしょうか。大切なのは、無理に起こして動かそうとするよりも穏やかに生活リズムを整え、健康状態をチェックしながらサポートすることです。ここではご家族にできる主な対処法をいくつかご紹介します。

認知症の家族がよく寝てばかりいる場合はどのように接したらよいですか?
まず第一に、専門医に相談して原因を探ることです。認知症以外の病気や薬の影響で眠気が生じている可能性もあります。傾眠傾向そのものが重大な病気のサインかもしれませんので、気になる変化があれば早めに主治医に相談することが大切です。

そして、原因が認知症であることがわかれば、下記のような方法を心がけるとよいと思います。まず、ご本人が眠そうにしているときでも、優しく声をかけて刺激を与えましょう。日中は定期的に話しかけて覚醒を促しましょう。「どうせ寝ているから…」と放っておくのではなく、無理のない範囲で一緒にテレビを見ながら会話をしたり、昔の思い出話を引き出したりしてみてください。

また、日中の適度な運動や刺激を取り入れることも有用です。起きている時間にはできる範囲で身体を動かすよう促してみましょう。日中に適度に身体を動かすことで体温が上がり血行がよくなるほか、夜には心地よい疲労感が得られて質のよい睡眠につながります。そして、日中どうしても眠そうな場合は、短時間の昼寝でリフレッシュしてもらうのも手です。30分程度の仮眠であれば心身を休めることができます。ただし、長すぎる昼寝は夜の睡眠に影響してしまうため避けましょう。

さらに、夜間にしっかり眠れる環境作りも重要です。日中に太陽の光を浴び、夜は部屋を暗く静かに整えることで体内時計のリズムを整えます。寝る前に興奮するようなテレビ番組を避け、リラックスできる音楽を流す、温かい飲み物をとるなど穏やかに過ごせる工夫も取り入れてみてください。
どのような状態になったら受診すべきですか?
対処法を実践しつつ見守っていても、「この状態は病院に連れて行くべきだろうか?」と悩む場面があるかもしれません。以下のような場合は早めに医師に相談・受診することをおすすめします。

・急に傾眠傾向になったとき
・頭をぶつけた後から眠りがちになったとき
・高熱や痛みなどほかの症状を伴うとき
・せん妄が頻繁に起きるとき
・介護者が不安を強く感じるとき

以上のように、日頃から様子を観察し、いつもと違うサインに気付いたら早めに受診することが肝心です。高齢者が寝てばかりいる理由は認知症以外の健康悪化や加齢の影響も考えられるため、悪化を防ぐには早めの受診と相談をするようにしましょう。

編集部まとめ

認知症のご家族が日中寝てばかりいる様子を見ると、「このままでよいのだろうか」と心配になりますよね。しかし、よく眠るという状態自体は認知症のなかでよく見られる症状であり、必ずしも異常なことではありません。大切なのは、その背景にどのような原因があるかを理解し、適切な対策をとることです。本記事がその症状への対処法と病院を受診するタイミングを知るきっかけになれば幸いです。

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