短期記憶障害とは?その原因や症状、進行させないための予防策を解説

短期記憶障害とは?その原因や症状、進行させないための予防策を解説

認知症の症状として現れることも少なくないといわれる記憶障害ですが、そのなかでも、直前の記憶ができず、新しく物事を記憶できなくなってしまうのが短期記憶障害です。短期記憶障害はどのような症状が起き、何が原因で起こるのでしょうか。また、短期記憶障害の治療や予防策にはどのようなものがあるのでしょうか。短期記憶障害について正しい知識を身に付け、自身はもちろん、家族や身の回りの人に症状が見られたときの対応にお役立てください。

短期記憶障害の概要

短期記憶障害の概要

文短期記憶障害とはどのようなものなのか、通常のもの忘れとはどのように違うのかを解説します。また、短期記憶障害以外の記憶障害についても、その内容や進行速度についてご紹介します。章が入ります。

短期記憶とはどのような記憶ですか?
五感によって脳が新しい情報を受け取ると、その情報が記憶として保たれます。そして、脳に保持されたこれらの記憶を思い出すというプロセスをたどります。記憶はさまざまな要素により分類でき、このうち時間的要素によって分類された記憶のひとつで、数秒から数時間程度の短い期間の記憶のことを短期記憶といいます。短期記憶障害となると、数秒から数時間程度前に行っていたことが思い出せず、日常生活に支障が生じます。
短期記憶障害ともの忘れの違いについて教えてください
短期記憶障害ともの忘れで大きく違うのは、忘れる範囲と自覚症状の有無です。もの忘れは、物事の一部を忘れますが、物事自体は覚えています。また、忘れたことも自覚しており、指摘されると思い出せるのも特徴です。朝ごはんを食べたことは覚えているが、何を食べたか思い出せない場合は、もの忘れの範囲といえるでしょう。
一方で短期記憶障害となると、物事のすべてを忘れてしまい、忘れたことにも自覚がありません。朝ごはんを食べたこと自体を忘れてしまうのが、短期記憶障害の特徴です。
短期記憶障害のほかにどのような記憶障害がありますか?
時間的要素で分類した場合、短期記憶障害のほかに長期記憶障害があります。長期記憶とは、数日から数ヵ月単位や年単位での長い記憶のこと。長期記憶障害が起きると、自分の出身学校名、職業、家族の名前や顔などを忘れてしまうことがあります。

記憶する情報の種類で分類されるものとしては、エピソード記憶、意味記憶、手続き記憶があります。エピソード記憶とは、自分が体験したことの記憶で、家族旅行の記憶や学生生活のでき事など。意味記憶は、花や動物の名前、歴史上の人物名など、今まで自分が蓄えた知識をいいます。手続き記憶は、学習や練習によって身に付いた技術や自然と体が覚えている作業などのこと。料理や洗濯などの家事作業、自転車の乗り方、ピアノ演奏などがこれにあたります。記憶障害が起きると、これらの記憶、知識、作業技術などが思い出せなくなります。
記憶障害は種類によって進行速度が違いますか?
記憶障害は、一般的に短期記憶障害の次に長期記憶障害が起きることが特徴です。長期記憶のなかでは、エピソード記憶障害、意味記憶障害、手続き記憶障害の順に進行していきます。手続き記憶は、ほかの記憶と比べて記憶に残りやすいといえるでしょう。
また、認知症の種類によって記憶障害の進行程度も異なります。例えばアルツハイマー型認知症は緩やかに進行するため、記憶障害の進行速度もゆっくりです。脳血管型認知症以外では、初期にど忘れしたような症状が見られ、その後は自覚症状がないまま症状が進行していく特徴があります。

短期記憶障害の原因と症状

短期記憶障害の原因と症状

短期記憶障害はどのようにして起こり、どのような症状が起きるのでしょうか。家族や身の回りの人の行動などに心あたりがある場合は、短期記憶障害の可能性もあります。早期発見や早期予防のためにも、短期記憶障害の原因や症状について知っておきましょう。

短期記憶障害の原因について教えてください
短期記憶障害は、主に海馬の異常により起こります。海馬とは脳に記憶を保持させる役割を持つ部位のこと。加齢などによって海馬の機能が衰えることで、新しい物事が覚えられなくなります。
そもそもの原因としては、加齢のほか、軽度認知障害、認知症、うつ病、高次脳機能障害、PTSD、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下、ビタミン欠乏症などさまざまですが、高齢者の場合のほとんどは認知症が原因です。
短期記憶障害ではどのような症状や特徴がありますか?
短期記憶障害では、数秒から数時間という短期記憶に障害が起きます。具体的には、今日の日付や今の季節がわからない、数分前に聞いた話を覚えていない、同じことを何度も繰り返し聞く、物を置いた場所を忘れるなどの症状が見られます。
また、短期記憶障害の場合は、でき事そのものを覚えていないため、忘れた自覚もありません。自分で財布をしまったとしても、その記憶をなくしてしまうため、誰かに盗まれたり隠されたりしたと思い込み、妄想につながることもあります。妄想によって家族を責めたり、話が合わずに周囲の人とトラブルになったりすることもあるので注意が必要です。

短期記憶障害の治療法と予防策

短期記憶障害が起きた場合には、どのような治療を行うのでしょうか。また、予防できる方法はあるのでしょうか。短期記憶障害の進行を遅らせるための治療法や予防策を解説します。

短期記憶障害の治療法について教えてください
短期記憶障害については、治療ができる場合は、その原因となる病気の治療を行います。例えば、甲状腺機能低下が原因の場合は甲状腺ホルモン補充を、ビタミン欠乏症の場合はビタミン補充を、うつ病の場合は適切な抗うつ薬の投与や精神療法を行うなどが挙げられます。
ただし、認知症の場合は根治することができません。したがって、認知症が原因で短期記憶障害が起きている場合は、症状の進行を遅らせる治療が選択されます。治療法は、抗認知症薬の投与、理学療法や作業療法によるリハビリ、音楽療法などがあります。症状によっては、抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬などの薬物療法が行われる場合もあります。
短期記憶障害の予防策はどのようなものがありますか?
短期記憶障害の進行を遅らせるための予防策として、まず運動がおすすめです。運動をすることで、脳神経のネットワークに変化が生じ、認知機能低下を防止すると考えられています。また、海馬の血流量や脳の灰白質が増加することが期待できるといわれています。走るなどの激しい運動をする必要はありません。週5日1回30分のウォーキングといった有酸素運動が理想的です。無理せず、それぞれに適した内容で、できるだけ運動を取り入れることをおすすめします。
食事では、果物、魚、野菜を中心にすることで、記憶障害の発症や進行予防になると考えられています。逆に、マーガリンや加工肉に含まれる、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は認知症の発症リスクを高めると考えられているため、摂り過ぎには注意しましょう。
ストレスを減らすことも、予防策としては重要です。ストレスは脳の負担となり、記憶障害を早める可能性があります。患者さん本人が、自分でストレス管理をすることは難しいため、周囲の人が日頃からよく様子を見て、ストレス発散をさせてあげることが有効です。
また、定期的に脳ドックなどの脳の画像検査をすることも大切です。脳の状態を把握することで、今後起きることが予測されるリスクに事前に備えることもできます。
記憶障害の人への対応や支援で注意点があれば教えてください
記憶障害の人へは、まずは否定しないことが重要です。記憶障害が起きると、何度も同じ質問をするなど、答える側がうんざりしてしまうこともあるでしょう。しかし、頭ごなしに否定したり本人を責めたりすると、自信をなくし、悲しみや怒り、不安を助長してしまい、症状の悪化にもつながりかねません。ストレスを溜めず安心して過ごすことは、症状の進行抑制にもつながります。何度も同じことを聞いてきても、本人にとっては大事であると理解して接しましょう。
何度も聞かれることは、本人の目につく場所にメモを貼るのもひとつの手です。本人の記憶に頼らなくても生活できるように、物の位置を変えない、毎日のスケジュールをパターン化する、目立つ場所に大切な物を置いておくなど、環境を整えることもおすすめです。

編集部まとめ

短期記憶障害では、自分が今どこにいるのかがわからなくなる、数秒前に話していたことを忘れる、繰り返し同じ質問をするなどの症状が見られます。物事のすべてを忘れてしまい、忘れた自覚もありません。認知症が原因の場合は、症状の進行を抑えるための治療が行われます。記憶障害の人に対しては、話を否定せずに根気よく接することが大切です。安心して過ごせるよう、周囲の人がサポートしてあげるとよいでしょう。

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