てんかんは高齢者にも発症し、認知症と間違えられることがあります。本記事では、高齢者のてんかんの特徴や症状、若年層との違い、認知症との見分け方について解説します。
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高齢者のてんかんの特徴と症状
- 高齢者にもてんかんはあるのですか?
- てんかんは若年層の病気と思われている方もいますが、高齢者でも発症します。特に65歳以上の高齢者では、脳血管障害や認知症、頭部外傷などが原因となり、新たにてんかんを発症するケースが増えています。高齢者のてんかんは見逃されることが多く、認知症の症状と誤解されることがあります。そのため、発作の特徴を理解し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
- 高齢者のてんかんの特徴を教えてください。
- 高齢者のてんかんは、若年層のてんかんとは異なる特徴を持ちます。まず、発作の原因として、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が関与することが多く、これを脳卒中後てんかんと呼びます。また、認知症と関連するケースもあり、アルツハイマー型認知症患者さんでは発症リスクが高まることが知られています。さらに、高齢者のてんかんは、意識障害やぼんやりする状態が主症状となることが多く、痙攣を伴わないこともあるため、見逃されやすい点も特徴です。
- 高齢者のてんかんの症状にはどのようなものがありますか?
- 高齢者のてんかんでは、典型的な全身けいれん発作(強直間代発作)は少なく、意識が一時的に途切れる複雑部分発作が多いとされています。具体的な症状としては、突然ぼんやりする、会話が止まる、手を無意識に動かす、周囲の呼びかけに反応しないなどが挙げられます。また、短時間の記憶障害や、意識の混濁が発作として現れることもあります。認知症との鑑別が難しく、診断が遅れることがあるため、家族や周囲の方が異変に気づくことが重要です。
- 高齢者のてんかんはどのように治療を行いますか?
- 高齢者のてんかん治療では、抗てんかん薬による薬物療法が基本となります。特に、高齢者は多くの薬を併用していることが多いため、ほかの薬との相互作用に注意しながら治療を進めます。抗てんかん薬としてレベチラセタムやラコサミドなどを用います。また、生活習慣の改善も重要であり、十分な睡眠やストレスの管理、適度な運動を取り入れることで発作を予防することが期待できます。発作をコントロールすることで、高齢者の生活の質(QOL)を維持することが可能となります。
認知症とてんかんの相違点
- 認知症とてんかんには似ている症状や特徴がありますか?
- 認知症とてんかんには、意識障害や記憶障害といった共通する症状があり、特に高齢者では見分けが難しいことがあります。例えば、認知症の初期症状として短期記憶の低下がみられる一方で、てんかんの発作後にも一時的な記憶障害が生じることがあります。また、てんかんの部分発作(複雑部分発作)では、一時的にぼんやりしたり、無反応になったりすることがあり、認知症の症状と混同されることがあります。さらに、認知症患者さんの一部は、病気の進行に伴い、てんかんを併発することがあるため、両者の違いを慎重に見極めることが重要です。
- 認知症とてんかんを見分けるポイントを教えてください。
- 認知症とてんかんを見分けるポイントはいくつかあります。まず、認知症は一般的にゆっくりと進行し、記憶力や判断力の低下が徐々に悪化するのに対し、てんかんの症状は突然発症し、発作が終わると速やかに回復することが特徴です。特に、てんかんの部分発作では、数秒から数分間意識がぼんやりし、その後は元の状態に戻ることが多いです。一方、認知症では、記憶障害が持続的であり、日常生活において一貫して認知機能の低下が見られます。
また、認知症では時間や場所の認識が曖昧になる見当識障害や、計画を立てることが難しくなる実行機能障害が見られるのに対し、てんかんの発作では、短時間の意識消失や記憶の抜け落ちが主な症状となります。さらに、脳波検査(EEG)を行うことで、てんかんの特有の異常波を確認できるため、診断の一助になります。
認知症がてんかんのリスクになる可能性
- 認知症にてんかんが合併することはありますか?
- 認知症にてんかんが合併することは十分にあり得ます。特に高齢者では、認知症の進行に伴い脳の神経細胞の変性が進むことで、異常な電気活動が発生しやすくなります。そのため、認知症の患者さんではてんかんの発症リスクが高まると考えられています。
- アルツハイマー型認知症のてんかん発症リスクについて教えてください。
- アルツハイマー型認知症の患者さんは、認知症のない高齢者に比べて、てんかんを発症するリスクが高いとされています。その頻度は1.3~6.1%とされています。しかし、アルツハイマー型認知症による症状なのか、てんかんに伴う症状なのか見分けが付かないこともあります。発作の種類としては、けいれんを伴わない非けいれん性てんかん発作が多く、一時的な混乱や記憶の抜け落ち、突然のぼんやりした状態などが見られることが特徴です。
このため、アルツハイマー型認知症の患者さんで、認知機能の低下が急激に進行する場合や、エピソード的な意識障害が見られる場合は、てんかんの可能性を考慮し、脳波検査(EEG)を行うことが推奨されます。てんかんを早期に診断し、抗てんかん薬を適切に使用することで、発作のコントロールが可能となり、認知機能の悪化を抑えることが期待されます。
- レビー小体型認知症はてんかんを合併しやすいですか?
- レビー小体型認知症(DLB)は、パーキンソン病と関連のある認知症であり、幻視や認知機能の変動、パーキンソン症状などの特徴があります。レビー小体型認知症では、アルツハイマー型認知症ほど高頻度ではないものの、てんかんを合併するケースがあります。その頻度は2.47~14.7%と報告されています。
レビー小体型認知症に合併するてんかん発作は、短時間の意識障害や突然の混乱、運動の停止などがみられることがあり、認知症の症状と区別が難しい場合があります。特に、レビー小体型認知症では幻視や認知機能の変動が特徴的であるため、発作による一時的な混乱と誤認されることがあります。そのため、疑わしい症状がみられた場合には、脳波検査を行い、てんかんの有無を確認することが重要です。
認知症とてんかんの区別がつかないときは
- 家族が認知症と診断されていますが、てんかんではないかと思っています。何科を診療すればよいですか?
- 認知症と診断されていても、突然の意識消失や無反応、動作の停止が見られる場合は、てんかんの可能性があるため、神経内科または脳神経外科を受診することが推奨されます。特に、高齢者では認知症と間違われることがある非けいれん性てんかん発作が多く、発作中はぼんやりとしたり、反応が鈍くなったりすることがあります。
てんかんを疑うべき主な症状として、数秒から数分間の意識混濁が繰り返される、話しかけても応答しない時間が増える、同じ動作を繰り返す(口をもぐもぐ動かす、手をこするなど)、発作後に混乱状態になるなどが挙げられます。こうした症状が見られる場合は、てんかんの専門医がいる神経内科や脳神経外科を受診し、脳波検査を含めた精査を行うとよいでしょう。
- 認知症とてんかんを判別するためにどのような検査を行いますか?
- 認知症とてんかんを区別するためには、脳の状態を詳しく調べる検査が必要になります。代表的な検査として、脳波検査(EEG)、MRIやCT、認知機能検査が挙げられます。
脳波検査(EEG)は、てんかんの診断において重要な検査であり、脳の異常な電気活動がないかを確認します。特に、高齢者のてんかんでは発作が目に見えにくいため、脳波検査によって異常な波形が記録されることで診断がつくことがあります。
MRIやCTは、脳の構造的な異常を確認するために行われます。脳血管障害による認知症やアルツハイマー型認知症との鑑別に役立ちます。特に、脳梗塞後のてんかんや、脳腫瘍が原因で発生するてんかんの場合には、MRIが有効です。
認知機能検査(MMSEや長谷川式認知症スケールなど)も実施され、認知症の進行具合や記憶障害の特徴を調べます。てんかんによる意識消失や一時的な記憶障害と、認知症による持続的な記憶障害を区別するのに役立ちます。
これらの検査を組み合わせることで、認知症とてんかんを正確に判別し、適切な治療を行うことが可能になります。
まとめ
高齢者のてんかんは見逃されやすく、認知症との区別が難しいことがあります。しかし、てんかんは適切な診断と治療によって発作を抑え、生活の質を維持することが可能です。認知症と診断されていても、突然のぼんやりや短時間の意識障害が見られる場合は、てんかんの可能性を考慮し、医療機関を受診することが重要です。この記事がその一助になれば幸いです。