認知症の基本|認知症の種類・症状・治療方法や予防方法について解説

認知症の基本|認知症の種類・症状・治療方法や予防方法について解説

認知症という言葉を、聞いたことがないという方はほとんどいないのではないでしょうか。

およそ1億2000万人の日本人のうち、2024年3月現在、65歳以上の人口は約3600万人です。

2012年には65歳以上人口の7人に一人が認知症だとされていました。

それが2025年には5人に一人、700万人が罹患者になると推定されている病が認知症です。

親族や知人に認知症の罹患者がいるという方もいるのではないでしょうか。

ここではそんな認知症について、そのメカニズムと予防法について解説していきます。

認知症とは

寝ている人

認知症とは、さまざまな原因によって脳の細胞が死んだり、機能が低下したりすることで、多様な障害が生じ、日常生活に支障をきたす状態を指します。この状態が約6ヵ月以上継続することが特徴です。

人の言葉や思考をコントロールするのは脳の働きです。この脳に病気が生じて、萎縮が起きたり働きが悪くなったりすると、人の言葉や思考にさまざまな障害が起こります。

精神にも身体にも支障が出て、生活そのものがうまくできない状態になり、この状態がおよそ6ヵ月以上続くと、認知症と診断されます。

加齢によるもの忘れとの違い

悩む人

ある程度高齢になってくると、うっかり忘れてしまったということはよくあるでしょう。

物忘れと年齢は紐づけられて語られることが多いですが、そのうっかりと、病による物忘れはどのように違うのでしょうか。ここでは年齢によるうっかりと、病による物忘れの違いを解説します。

体験したこと自体を忘れてしまう

認知症の診断をするにあたってまず確認しておきたいのが、加齢による物忘れと病による物忘れの違いです。

加齢による物忘れとは、自分が体験したり聞いたりしたこと自体は覚えているが、行動に移すのをうっかり忘れてしまうというような状態を指します。

例えば、出かける約束をしていて財布を持ってくるように言われたのに、実際に出かけたらお財布を忘れて出てしまったとしましょう。このとき、「お財布持ってきてって言ったじゃない」と指摘されると「あ!そうだった!」と言われたことを思い出せる、というのは加齢による物忘れの可能性が高いといえます。

出かける約束をそもそも覚えていなかったり、言われたことも覚えていなかったり、という状態である場合は病による物忘れを疑うべきでしょう。

ほかにも食事をしたことを忘れ、すぐに再び食事を要求する場合は、病気による物忘れの可能性が高いと考えられます。

もの忘れの自覚がない

加齢による物忘れと、病による物忘れの大きな違いは、忘れたことを自覚できているか、という点にあります。

「あ!そうだった!」と思い出せるのは、忘れたことを自覚できているからです。しかし「そんなこと言われてない!本当は言ってないことを私が忘れたことにされた!」というような反応が続くようなら、病による物忘れを疑った方がよいでしょう。

生活への支障がある

加齢による物忘れの場合、進行はごくゆっくりになります。そのため、生活そのものが著しく妨げられるというようなことはほとんどありません。

それに対して病による物忘れは、人によって違いはありますが、進行が速い傾向にあります。 そのため急激に生活に支障が出てくることも少なくありません。

方向感覚や記憶に支障が出ると、買い物に行った後に戻れなくなったり、医師に食べてはいけないと言われたものを食べて体調を崩したりすることがあります。加齢による物忘れではここまで生活に支障が出ることはほとんどないといわれているため、病による物忘れであると判断できます。

認知症の種類

老人

認知症には大きく分けて4つの型があり、型によって原因や症状は違います。ここでは代表的な認知症の4つの型について解説します。

アルツハイマー型認知症

認知症のなかで一番多いのがアルツハイマー型認知症であり、認知症全体の67.6%を占めます。

アルツハイマー型認知症は、脳に長い時間をかけてアミロイドβ・リン酸化タウというタンパク質が溜まっていくことによって起きると考えられています。

このタンパク質が神経細胞を破壊し、脳が萎縮することによって発症する認知症です。初期に記憶や学習に関連する海馬の細胞が破壊されることが多く、最近覚えたことを思い出せないというような物忘れが初期症状によくみられます。

血管性認知症

診察

血管性認知症は認知症全体の19.5%を占め、アルツハイマー型に次いで多い認知症です。原因としては、脳梗塞・脳出血・脳卒中などの脳の血管の障害によって脳に十分な血液を送ることができなくなっていることが考えられます。

血管の障害により、栄養・酸素といった脳に必要なものが滞り、脳細胞が壊死するためです。壊死した部位によって症状が変わり、麻痺の症状が出ることもあります。また壊死していく段階や、脳の血管に障害が起きるたびに少しずつ進行していくのも特徴です。

脳の血管が障害を起こす原因には、糖尿病・高血圧・脂質異常などの生活習慣病などもあるため、持病があったり生活習慣に問題があると指摘を受けたりしたことがある場合は注意が必要です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、認知症全体の4.3%と、アルツハイマー型・血管性認知症に比べると少ない認知症です。レビー小体とは、脳神経細胞にαシヌクレインというタンパク質がたまるとできる構造物のことです。

発見されたのはパーキンソン病の研究中でしたが、1970年にこのレビー小体が一部の認知症罹患者の大脳に確認されたことから、レビー小体型認知症と呼ばれています。

およそ100年前に発見されたアルツハイマー型認知症に比べ新しい認知症のため、近年になって正しく診断されるようになりました。

前頭側頭型認知症

前頭側頭葉型認知症は認知症全体から見ると1%と、発症の少ない認知症といえます。以前はピック病とも呼ばれていました。

脳の前頭葉および側頭葉に萎縮が起きることによって発症し、その症状はほかの型の認知症に比べるとかなり特徴的です。

脳の神経細胞のなかにピック球と呼ばれるものが見られることがあり、それを以前はピック病としていましたが、現在では前頭側頭葉型認知症の1つとされています。

認知症の症状

散歩

認知症には大きく分けて4つの型があることがわかりました。

ここでは代表的な4つの認知症の症状について詳しく見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症の場合、初期に海馬が破壊されるケースが多いため、物忘れ(記憶の障害)から始まる傾向があります。

  • 昔のことはよく覚えているのに、最近のことが思い出せない
  • 時間・場所・人・出来事に対する認識に混乱が起きる
  • 以前は簡単にできたことができない
  • 問題が解決できない
  • 目で見えているものを認識するのが難しくなる

上記のような症状が多く見られるといわれています。

血管性認知症の症状

血管性認知症の症状として、認知症の症状に加えて麻痺や運動機能に障害が出ることがあります。 認知症の症状の代表的なものは以下です。

  • 記憶障害(新しいことを覚えられない など)
  • 見当識障害(日時の感覚がわからなくなる・方向がわからなくなる など)
  • 注意障害(空気が読めない・2つ以上のことを考えるのが難しくなる など)
  • 言語障害(発音の不明瞭・言葉でのコミュニケーションができなくなる など)

運動機能の障害で現れやすい症状は以下です。

  • 運動麻痺(自分の意思で手足を動かせない など)
  • 歩行障害(自力で歩けなくなる・立てなくなる など)
  • 感覚障害(五感を感じなくなる・痺れを感じる など)
  • 構音障害(言葉をはっきり発音できない など)
  • 嚥下障害(ものを飲み込みづらくなる・誤嚥する など)

認知症の症状に加えて、麻痺・言葉が出てこない・発音できないなどの症状がある場合、血管性認知症の可能性が高いといえるでしょう。

レビー小体型認知症の症状

歪む時計

レビー小体型認知症の症状の特徴として、症状によってその経過は多岐にわたるという点があげられます。

レビー小体型認知症の代表的な症状が幻視です。幻視の特徴として、見えるものが鮮明で、とても具体的な内容を話します。

その他にも、レム睡眠時行動障害(RBD)と呼ばれる症状があります。レム睡眠中に大声をあげる・手足をバタバタさせる・壁をどんどん叩くなどの行動も特徴です。この症状はレビー小体型認知症が発症するよりも以前から見られることも多く、レビー小体型認知症を発見するための重要な手がかりになります。

レビー小体型認知症によく見られる症状を以下に示します。

  • 幻視
  • レム睡眠時行動障害(RBD)
  • 血圧変動(起立性低血圧 など)
  • 嗅覚障害
  • 尿失禁
  • 失神
  • 転倒
  • 動作緩慢
  • 筋固縮(筋肉が固まって力が抜けなくなる状態) など

一人の患者さんでも、時間帯や日によって状態が大きく変わることもレビー小体型認知症の特徴です。朝は症状が少なくても午後に悪化する、または週の前半に悪化し後半に回復するなど、症状が変動することが多く見られます。

前頭側頭型認知症の症状

脳の前頭葉は性格や言葉・社会性と関連が深い部位です。側頭葉は記憶や言葉・聴覚との関連が深い部位になります。

前頭葉や側頭葉が萎縮することによって起きる前頭側頭型認知症には特有の症状があり、感情を抑制できなくなる・社会性が著しく欠如するといったものがあげられます。ひどい場合には人に対して暴力的になったり、犯罪をおかしたりすることもあるため、注意が必要です。

軽微な場合には身の回りのことに無頓着になる傾向があり、見た目がだらしなくなる(無精髭・不潔)などもわかりやすい特徴です。感情が鈍くなり人と共感できない、言葉を自発的に発することが少なくなります。

  • 感情の抑制ができなくなる
  • 社会性が欠如する
  • 感情が鈍くなる
  • 同じ行動を繰り返す
  • 自発的な発言の減少

上記が前頭側頭型認知症によくみられる症状です。同じ言葉を繰り返したり、人に言われたことをそのままオウム返しにしたりという症状が見られる場合もあります。こういった症状が緩やかに進んでいき、発症後はおよそ6〜8年で寝たきりになるケースが多いのが前頭側頭型認知症です。

認知症の治療方法

貼り薬

アルツハイマー型認知症に対しては脳細胞の壊死を抑えることを目的とした薬剤が多数開発されています。

コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬などがそれにあたる薬剤です。また2023年に『レカネマブ』という、アルツハイマー型認知症の原因に働きかけ、症状の進行そのものを抑える薬が国内で初めて承認されました。ただし、脳出血や脳浮腫などの有害事象も起こりやすいという欠点があり、この薬を使用できるのは厳格に副作用のチェックができる大規模な医療機関に限定されているのが現状です。

レビー小体型認知症の場合にはパーキンソン病の治療薬が用いられることもあります。幻覚や興奮などの症状に関しては抗うつ剤・抗てんかん薬・抗精神薬・漢方薬なども使われます。

血管性認知症・前頭側頭型認知症については2024年現在、症状を改善する・進行を抑えることができると認められた薬はないため、対症療法によって治療が行われることが多いのが現状です。

認知症の予防方法

リハビリ

認知症は高齢になったらある程度は仕方がない、と諦めてはいないでしょうか。

認知症は毎日の生活習慣である程度予防ができたり、進行を遅らせられることがわかっています。ここでは毎日の生活のなかで、どのようなことに気をつければいいのかを解説します。

生活習慣病を予防・治療する

認知症の発症を予防するためには、生活習慣病の予防・改善が欠かせません。生活習慣病には大きく分けて以下のものがあります。

  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 糖尿病
  • 脳血管障害・脳卒中
  • 狭心症・心臓病(心筋梗塞 など)
  • 高尿酸血症

それぞれの病気について治療したり、予防したりする必要があります。すでに生活習慣病の診断をされている場合は、それぞれの病気についての治療が必要です。

また、これらの病気を予防・改善するために、下記のような予防策があげられます。

  • 運動(毎日の運動・簡単なストレッチ など)
  • 食事(健康な食生活・塩分などのチェック など)
  • 睡眠(毎日の必要な睡眠時間の確保・質のよい睡眠 など)
  • タバコ(禁煙・減煙のすすめ など)
  • アルコール(飲みすぎない・適量を心がける など)

これらの予防策を心がけることで、生活習慣病を防ぎ、それが認知症の予防につながっていきます。

認知症は型によってはまだ治療法が確立されていないものもあります。そのためにも、まずは認知症を発症させないことが大切です。日々の生活のなかで、少しでも認知症を防ぐための対策を心がけましょう。

適度な運動・バランスのとれた食事など

食事

上記の予防策を具体的に行うことで、生活習慣は自ずと整っていきます。生活リズムを整えるための具体策として下記のようなものがあります。

  • 朝起きたら朝日を浴びる
  • 朝食を摂る
  • 適度な運動を心がける
  • 毎日健康な食事をする
  • 禁煙する
  • アルコールは適量に
  • ストレスを溜めないようにする
  • 歯磨きは欠かさずに
  • 規則正しい睡眠とリラックスして睡眠を取る

特に食事に関しては、過剰な塩分・炭水化物を控える、野菜を十分に摂るなどを心がけましょう。食事をするために必要なのは歯です。

歯を健康に保つことも生活習慣病を防ぐための有効な対策であることを覚えておきましょう。

社会活動に参加する

認知症の予防には、人との関わりがとても大きな役割を果たしていることがわかっています。厚生労働省のデータでも、ボランティアや趣味・スポーツなどで社会参加の割合の高い地域の方が、認知症・うつ・転倒のリスクが低いという結果が出ています。

デイサービス・趣味のサークル・スポーツ・ボランティアなど、人と関わる時間が認知症のリスクを下げてくれることを念頭におきましょう。年齢を重ねても家に引きこもるのではなく、人との関わりを持つことが大切です。

まとめ

微笑む人

認知症について、そのメカニズムと症状・治療法・予防法についてみてきました。

認知症には大きく分けて4つの型があり、その型によって症状や治療法が違うことも理解できたことでしょう。

しかしまずは認知症を予防すること、発症が認められた場合はできるだけ速やかに早期発見することが大切です。

兆候を感じた場合はできるだけ早く医療機関で受診し、診断を受けることをおすすめします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


認知機能
低下リスク予測AI

チャット形式で会話することで、
ご自身の認知機能が低下するリスクをチェックすることが可能です。

認知機能低下リスクを
チェックしてみる
認知機能低下リスクをチェックする