認知症の症状がどのように現れるかは人それぞれによって異なりますが、共通してみられやすい症状の1つに夕暮れ症候群があります。
この記事では、夕暮れ症候群の特徴や、なぜ引き起こされるのかという原因、そして対策方法などについて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
夕暮れ症候群について
- 夕暮れ症候群とはどのような症状ですか?
- 夕暮れ症候群は認知症の方にみられる特有のパターンの1つで、その名前のとおり、日中などは特に問題なく穏やかに過ごしていたような方が、夕方や夜の時間になっていくと落ち着かなくなって徘徊や一人言などのような症状がはじまったり、場合によっては奇声や大声を出したり、暴れたりしてしまうといったような状態がしばしば現れるといったものです。
Sundowning syndromeの日本語訳として夕暮れ症候群とよばれ、そのほかにも日没症候群や、たそがれ現象などと呼ばれることもあります。
- 夕暮れ症候群の原因はなんですか?
- 夕暮れ症候群が生じる原因としては、まず日中の疲労によって脳の機能が低下することが挙げられます。
日中はまだ疲れていないため認知機能が保たれているものの、疲労が蓄積されることで認知機能が低下し、見当識障害が生じて、今いる場所や周囲の人との関係性などが正しく認識できなくなることから、自身の置かれている状況がわからなくなって不安に陥り、落ち着かない状態となったり、周囲に対する攻撃性が現れたりします。
また、夕方という時間帯は外の明るさなど周囲の環境が変化していく時間帯ですので、時間に対する認識が乱れやすくなり、これも今自分がおかれている状況がわからなくなってしまう要因の1つとなります。 周囲の環境が変化するという点では人の生活リズムが変わる時間帯ということも関係があり、夕方の時間は家族などが夕食の準備を開始したり、近所の子どもが帰ってくるなどで騒がしくなるような時間でもあります。
そのため、それまで話し相手になっていた人やケアをしていた人が近くにいなくなってしまうことでの不安や、周囲が慌ただしい雰囲気になっていくなかで自分は動けないという無力感、騒音に対するいらだちなどから強いストレスを感じ、夕暮れ症候群の状態になることもあります。
そのほか、過去の記憶が影響しているケースもあり、認知症の症状によって記憶の時系列が曖昧になることから、例えば自分が仕事をしていたときのような感覚になって今いる場所を職場と勘違いして、そこから帰宅しようとしたり、子どもを迎えに行こうとして外に出ようとしたりしてしまうという場合があります。
会社からの帰宅やお迎えなどの行動も夕方から夜にかけて行われる場合が多いため、夕方の時間にこういった行為が引き起こされやすいものといえます。
ただし、夕暮れ症候群は必ずしも上記のような原因のみではなく、服用している薬の影響や睡眠障害による原因などの場合もありますので、こういった症状が見られる場合は一度主治医などに相談してみるとよいでしょう。
- 夕暮れ症候群はどのようなときに起こりやすいですか?
- 夕暮れ症候群は、夕方という時間におけるさまざまな環境の変化による不安感やストレスなどによって生じるものです。
そのため、急激な明るさの変化や、騒音などによる変化、周囲にいる人たちの行動が急に変化するといった状態になると起こりやすくなると考えられます。
夕暮れときの明るさの変化を穏やかにするために照明を工夫したり、何か好きなことに集中できる状態を作ったり、適度に会話を続けたりといった対応を行うと、夕暮れ症候群を抑えることができます。
- 夕暮れ症候群によるリスクはどのようなものがありますか?
- 夕方の時間帯は介護をする人にとっても忙しくなる時間帯であり、認知症の方に意識を向け続けていられなくなるタイミングです。
そのため、気が付いたら外に出て徘徊をしてしまい、場合によっては事故にあったり、行方不明になってしまったりというリスクが考えられます。 また、夕暮れ症候群の状態となるとしっかりとケアをしなくてはならなくなるため、ただでさえ忙しい時間帯に手を割かなければならず、介護者の心理的、身体的な負担が大きくなる原因となるほか、場合によっては他害行為などによるリスクもあります。
- 夕暮れ症候群の診断基準を教えてください
- 夕暮れ症候群かどうかについては、明確な診断基準はありません。
そもそもあくまでも認知症のパターンとしてみられやすい状態の総称であり、夕暮れ症候群には特有の治療などが行われるというものではなく、診断を行うとすればせん妄に近い症状が見られるといった形となります。
一方で、夕暮れ症候群が見られる場合にはその時間帯特有の変化などに対応できれば適切なケアも行いやすくなりますので、様子の変化が見られる時間帯などに特徴があるようでしたら、介護者のその時間帯の行動なども含めて主治医などに相談し、適切な対応方法を検討してみるとよいでしょう。
夕暮れ症候群の対応について
- 夕暮れ症候群が起こったときの対応で注意すべきことはありますか?
- 夕暮れ症候群に限りませんが、認知症の方の症状は、不安感やストレスが1つの要因となって引き起こされているケースが多く、怒ったり、注意したりといった行為は症状をエスカレートさせてしまう要因となるため、注意が必要です。 また、例えば自宅にいるのに、帰宅したいと言い出すなど周囲から見れば明らかに間違えた発言や行動をしていても、本人にとってはそれが正しい内容であるため、否定をされると不安感や不信感が募ったり、自己肯定感が低くなって悪化する可能性がありますので、まずは肯定的な反応をしつつ、ほかのことに気を逸らしたり、方向修正するといった対応を行うことが必要です。
- 夕暮れ症候群に対する適切な対応を教えてください
- 夕暮れ症候群が出ている状況においては、まずはしっかりと話を聞いてあげるなど、寄り添う行為を重視した対応が大切です。
人と話をすることで気持ちが落ち着いてくると、状況が理解できるようになって症状も改善されやすいので、無理に状況を理解させようと説明などを行うのではなく、ゆっくりと落ち着かせることを重視しましょう。
お茶やお菓子をすすめて気を逸らしたり、外に出たいという場合には一緒についていって少し散歩をするといった行為も、症状を緩和させるために有効です。
夕暮れ症候群を緩和させる方法について
- 夕暮れ症候群を和らげるために自宅でできる方法はありますか?
- 夕暮れ症候群が見られるようであれば、まずは症状の出方や介護者の行動パターンなどを記録し、どのような場合に症状が発生しやすいかをチェックしてみましょう。
夕飯の準備を始めると症状が出やすかったり、環境音によって症状が出やすかったりと何かしらのパターンが見えてきたら、その原因に対して何かしらの対策を行うことで、症状を和らげやすくなる可能性があります。
- 生活環境を整えることで夕暮れ症候群は改善できますか?
- 夕暮れ症候群は夕方の急な環境変化が要因となっているため、部屋が常に一定の明るさを保てるように照明を工夫したり、テレビや音楽などを適度な音量で流し続けるようにしてみたり、あるいは家具の色を明るめで統一して、部屋のなかを明るく感じやすくしたりといった形で、環境を整えるとよいでしょう。
生活リズムが乱れていると睡眠時間の関係などから夕暮れ症候群が引き起こされやすくなる場合もあるため、起床時間や睡眠時間、お昼寝の時間などを決まったパターンで行えるようにするというのも対策方法となります。
- 夕暮れ症候群は医療機関で治療を受けられますか?
- 夕暮れ症候群は、場合によっては服用する薬の調整などによって症状を抑えることが可能です。
また、医療機関で相談することで介護者の不安な気持ちに対しても改善を図ることができますので、症状について不安がある場合は気軽に一度医療機関など専門的な対応が行えるところで相談してみるとよいでしょう。
編集部まとめ
夕方や夜にかけて認知症の症状が出やすくなる夕暮れ症候群は、環境を整えたり、適切な対応を行うことで状況を改善させることも可能です。
症状にお悩みの方は、ここで紹介した内容を参考に、無理のない介護を行ってくださいね。