認知症はトレーニングで予防できる?効果と暮らしのなかでできる方法を解説

認知症はトレーニングで予防できる?効果と暮らしのなかでできる方法を解説

認知症は現在の医学では根本的な治療法がないため、予防がとても重要だとされています。最近の研究では認知症の発症リスクの約40%は生活習慣などの修正可能な危険因子によって左右されると報告されています。そのため、適切な対策を取ることで認知症の発症を遅らせたりリスクを下げたりすることが可能だと考えられています。そこで、本記事では認知症予防とトレーニングの関係について、日常生活で実践できる予防策をQ&A形式で解説します。

認知症予防とトレーニングの関係

認知症予防とトレーニングの関係
認知症は予防できますか?
完全に発症を防ぐことは難しいものの、認知症のリスクを減らしたり発症を遅らせたりすることは可能です。生活習慣の改善によって将来の認知症患者数の約40%は減らせる可能性があるとの報告もあります。特に、運動不足や喫煙、不健康な食事、過度の飲酒などは認知症の危険因子とされ、これらを見直すことで認知症予防につながると期待されています。予防といっても絶対に認知症にならないという意味ではなく、発症をできるだけ遅らせたり、軽度認知障害(MCI)の段階で進行を抑えたりすることを目指します。
認知症の予防トレーニングは効果がありますか?
身体を動かす運動は認知症予防に効果的だと多くの研究で示されています。例えば、日本神経学会のガイドラインでは、定期的な身体活動を行う高齢者は認知症(特にアルツハイマー型認知症)の発症率が低いことが報告され、運動習慣を積極的に取り入れることが推奨されています。

さらに、認知症でない高齢者やMCIの方を対象にした研究でも、運動によって認知機能の低下が抑制されたとの結果があり、運動は認知機能の維持に有益と考えられます。一方で、計算問題やパズルなどの脳トレーニング(認知トレーニング)については、認知機能を高める効果はあるものの認知症そのものの発症リスク低減効果はエビデンスが不十分です。

WHOも認知トレーニングはエビデンスが限定的だが、認知機能低下リスクを減らす目的で行ってもよい(条件付き推奨)としています。つまり、脳トレ自体に病気予防の保証はないものの、認知症の発症を遅らせる可能性があると考えられています。運動と組み合わせて脳も身体も鍛えることが予防には理想的です。

認知症予防に効果的なトレーニング方法

認知症予防に効果的なトレーニング方法
認知症を予防できるトレーニングにはどのような種類がありますか?
大きく分けて身体を動かす運動頭を使うトレーニングの2種類があります。運動には、ウォーキングや体操などの有酸素運動と、筋力トレーニングやバランス訓練などの無酸素運動(筋トレ)の両方が含まれます。

一方、頭を使うトレーニングには、読書・書字、計算問題、パズルなどの活動が該当します。これらは脳への刺激となり、認知機能の維持に役立ちます。実際、運動と食事指導、脳トレなど複数の要素を組み合わせた2年間の研究では、総合的な生活習慣改善プログラムを受けた高齢者は、健康アドバイスのみの群に比べて実行機能や処理速度が向上し、認知機能低下の抑制が報告されています。したがって、運動も脳トレも両方取り入れることが望ましく、心身両面からのトレーニングが効果的な認知症予防につながります。
認知症予防に効果的な運動を教えてください
特に有効なのは有酸素運動です。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水中歩行など、息が弾む程度の全身運動を習慣にしましょう。国際的な推奨では、週に合計150分以上の中強度の有酸素運動または75分以上の高強度有酸素運動を行い、加えて週2回以上の筋力トレーニングを行うことが望ましいとされています。筋力トレーニングとしては、スクワットや軽い腕立て伏せ、踵上げといった自宅で手軽にできる筋トレがおすすめです。これらは特別な器具がなくても始められ、下半身の筋力や体幹を鍛えて転倒予防にもつながります。運動習慣のない方は無理のない範囲から始め、徐々に回数や時間を増やしてください。
認知症予防に効果的な脳トレはありますか?
はい、日常で楽しみながらできる脳トレがいくつもあります。代表的なのは読む・書く・計算するといったシンプルな脳トレです。具体的には、日記や手紙を書く、音読する、簡単な計算問題を解くなどが挙げられます。また、折り紙や塗り絵も指先を使う細かな作業で脳を活性化するとされています。文字を書いたり計算したりすることで思考力や判断力を鍛える効果が期待できますし、手先を動かす活動は脳の運動野や視覚野も刺激するため脳全体の活性化につながります。
毎日継続できる認知症予防トレーニング法を教えてください
認知症予防は無理なく毎日続けられることが大前提です。以下のような習慣を取り入れてみましょう。運動・脳トレ・交流をバランスよく取り入れ、少しずつでも毎日続けることが何より重要です。

【毎日の運動習慣】
通勤・買い物で歩く時間を増やす、エレベーターではなく階段を使うなど、日常のなかで身体を動かす工夫をします。重要なのは決まった時間に習慣化することです。

【毎日の知的トレーニング】
読み書き計算を毎日少しずつ行いましょう。新聞記事を声に出して読む、日記をつける、簡単な計算ドリルを1ページ解く、といった活動を取り入れてください。

【社会交流や趣味の時間】
トレーニングと少し離れますが、人と会話することも脳にとってはよい刺激です。毎日誰かと言葉を交わす、電話でもよいのでコミュニケーションを取ることを心がけてください。

トレーニング以外に効果的な認知症予防法

トレーニング以外に効果的な認知症予防法
認知症予防にはトレーニング以外の方法もありますか?
あります。運動や脳トレ以外にも、生活習慣全般の改善が認知症予防には重要です。具体的には次のような方法が効果的だとされています。

【食事】
健康的な食生活は認知症予防に有用だとされています。野菜や果物、魚、大豆製品、オリーブオイルなどを積極的に摂り、糖分・飽和脂肪・食塩を控えめにしたバランスのよい食事を心がけましょう。

【禁煙】
喫煙は認知症リスクを高める確実な危険因子の一つです。タバコを吸う方は非喫煙者に比べて認知症になりやすいことがわかっており、禁煙することでリスクを下げることが期待できます。

【適度な飲酒コントロール】
お酒との付き合い方も重要です。適量を守る分にはよいですが、過度の飲酒は認知症リスクを上げる可能性があります。

【睡眠とストレス管理】
十分な睡眠を取ること、良質な睡眠習慣を維持することも脳の健康に寄与します。また、過度なストレスは脳に悪影響を与える可能性があるため、適度にリラックスする時間を持ったり趣味で発散したりすることも大切です。

【持病の適切な治療】
高血圧症、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール)などの生活習慣病を放置しないことも予防に直結します。高血圧や肥満は将来の認知症リスクを高める一因です。血圧や血糖値を適正にコントロールし、医師の指導にしたがって治療しましょう。
認知症を予防できる食習慣について教えてください
脳と血管に優しい食習慣を心がけることが大切です。具体的には野菜・果物・魚を多めに、脂肪分や塩分・糖分は控えめにというのが基本方針になります。WHOのガイドラインでは、1日あたり最低400gの野菜と果物を摂取し、糖類と脂肪の摂りすぎを避け、塩分は1日5g未満に抑えることが推奨されていますこれは地中海食和食に近いイメージで、ビタミンや食物繊維、良質なたんぱく質や脂質をバランスよく摂る食事です。
認知症予防に有効とされる生活習慣はありますか?
はい、前述した運動・食事・禁煙以外にもいくつかの生活習慣が有効とされています。ポイントを整理すると以下のとおりです。ほかにも、十分な睡眠をとる、脳への衝撃を避ける(転倒や頭部外傷に注意する)なども長い目で見れば脳を守る生活習慣といえます。

【適度な飲酒】
過度の飲酒が悪影響である一方、適度な飲酒量に抑えることで脳卒中リスクを減らし結果的に認知症予防につながる可能性があります。

【社会活動・趣味】
趣味に熱中したりボランティアや地域活動に参加したりといった社会的・知的刺激がある生活は、ない生活に比べて充実感が得られメンタルヘルスに好影響です。直接的な科学的根拠は十分でないものの、孤独やうつを防ぐことで結果的に認知症の発症を遠ざける効果が期待できます。

【聴力のケア】
難聴も認知症の危険因子の一つです。加齢による難聴がある方は、適切に補聴器を使ってコミュニケーションの機会を確保するとよいでしょう。

【口腔ケア】
歯や口の健康も脳に影響します。噛む力や舌の機能低下は食欲不振や栄養低下、さらには会話減少につながります。毎日の歯磨きや定期的な歯科健診で口腔衛生を保ち、しっかり噛んで食べる習慣を維持しましょう。
認知症を招く生活習慣や食習慣を教えてください
以下のような習慣は認知症のリスクを高めると考えられています。

運動不足
喫煙習慣
過度の飲酒
不健康な食事
社会的孤立

これらの生活習慣は認知症のリスクを高める可能性があります。一つずつ改善することで将来の認知症リスクを下げることが期待できます。

編集部まとめ

編集部まとめ

認知症は誰にとっても不安な病気ですが、生活習慣を整えることで予防につなげることが可能です。今からでも遅すぎることはありません。運動も脳トレも、最初は無理のない範囲で構いません。毎日の小さな積み重ねが将来の大きな差につながるかもしれません。ぜひ本記事でご紹介した方法のなかから、ご自身に合った認知症予防トレーニングを今日から始めてみてください。

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