アルツハイマー型認知症とは?初期症状や治療、家族へのサポート方法などを解説します

アルツハイマー型認知症とは?初期症状や治療、家族へのサポート方法などを解説します

もの忘れが増えたり、同じ質問を繰り返す家族の姿に気付いたりすると、「もしかしてアルツハイマー型認知症かもしれない」と不安になる方は少なくありません。早い段階で正しい知識を持ち、医療や福祉のサポートを上手に活用できれば、ご本人もご家族も安心して生活を続けられます。本記事ではアルツハイマー型認知症の特徴や初期症状、診断・治療、そして介護する側の心構えと公的支援を解説します。

【認知機能の維持向上につなげる】脳の健康度をチェック!

アルツハイマー型認知症の特徴

アルツハイマー型認知症の特徴
アルツハイマー型認知症はどのような病気ですか?
アルツハイマー型認知症は、認知症のなかで最も多くみられるタイプの認知症です。全体の約6割以上を占め、脳の神経細胞が徐々に壊れて萎縮していくことで記憶力や判断力などが少しずつ低下していく進行性の脳の病気です。特に、もの忘れを中心とした症状が現れ、ゆっくりと進行していきます。
ほかの認知症との違いを教えてください。
認知症にはアルツハイマー型以外にも種類は多く、それぞれ原因や症状の出方に特徴があります。アルツハイマー型認知症は先述したように記憶障害が中心で緩やかに進行します。

これに対し、血管性認知症は脳梗塞など脳の血管トラブルが原因で発症するタイプで、まだらに症状が出たり段階的に悪化することがあります。

ほかに、認知症のなかで割合の高いレビー小体型認知症では幻視や手足の振るえや動作の緩慢さ(パーキンソン症状)が初期から見られるのが特徴で、日によって認知機能に変動があることも知られています。また、前頭側頭型認知症は若い年代でも発症することもあり、人格や行動の変化や言語障害が目立つ点で、もの忘れが中心のアルツハイマー型とは異なります。
加齢によるもの忘れとどう見分ければよいですか?
年齢を重ねれば誰でももの忘れは増えるものですので、もの忘れ=認知症というわけではありません。加齢によるもの忘れの場合、体験した出来事の一部をうまく思い出せない程度で、ヒントを出せば思い出せることが多いです。しかし、認知症によるもの忘れでは、体験した出来事そのものを丸ごと忘れてしまうのが特徴です。

また、もの忘れ以外にも日常生活に支障が出る変化、例えば日時や場所がわからなくなる、慣れた家事の手順がわからなくなるなどが見られる場合は認知症を疑った方がよいでしょう。

アルツハイマー型認知症の初期症状と進行の流れ

アルツハイマー型認知症の初期症状と進行の流れ
初期にはどのような症状が現れますか?
アルツハイマー型認知症の初期症状として典型的なのはもの忘れです。最近あった出来事を思い出せなかったり、何度も同じことを質問したりするようになります。また、日常生活の動作でミスや抜けが目立つこともあります。

さらに、時間や場所、人を取り違える見当識障害が見られることもあります。そして、本人が自分の変化に戸惑い不安になるため、感情面の変化や、周囲への疑い深さが初期から現れる場合もあります。
進行するとどのような変化が見られるようになりますか?
アルツハイマー型認知症はゆっくり少しずつ進行していきます。進行すると、記憶障害がさらに進み、数分前の出来事だけでなく昔の出来事にも混乱が及ぶようになります。また、周辺症状といわれる幻覚や妄想、昼夜逆転、徘徊などの行動面の症状も現れ、ご家族を悩ませることがあります。
どの程度の期間で重症化するのか教えてください
アルツハイマー型認知症が発症してから重症化するまでの期間には個人差がありますが、一般的には年単位の長い期間で進行することが多いです。ほかのいくつかの認知症に比べても進行は穏やかで、ゆっくりと悪化していく傾向があります。進行速度を左右する要因として、発症時の年齢や身体の健康状態、適切な治療介入の有無、介護環境などが関与すると考えられます。

アルツハイマー型認知症の診断と治療

アルツハイマー型認知症の診断と治療

診断にはどのような検査が行われますか?
診断では主に問診と筆記テストによる認知機能検査、血液検査、脳の画像検査、脳脊髄液検査などが行われます。問診では、医師がご本人やご家族から日頃の様子や困っていることを詳しく聞き取り、現在の症状の出方を把握します。その後、認知機能の低下が疑わしければ、その程度を評価するテストが行われます。結果が一定の基準より低ければ認知症が強く疑われます。

血液検査では、特定のビタミンの低下や甲状腺の状態などを評価します。アルツハイマー型認知症を評価するためではなく、アルツハイマー型認知症ではない可能性を確かめるために行います。

脳の画像検査も診断の重要な手がかりです。頭部のCTやMRI検査によって脳の萎縮や脳梗塞の跡がないかを調べます。アルツハイマー型認知症では、脳全体が萎縮しますが特に記憶を司る海馬という部分や頭頂葉の萎縮が顕著だとされています。また、場合によっては脳の血流を評価する検査(SPECT)などを行い、アルツハイマー型に特徴的な脳の働きの低下パターンを調べることもあります。そうした検査結果を総合的に判断し、ほかの病気による症状ではないと確認したら、アルツハイマー型認知症と診断されます。

また、診断には直接関わらないのですが、アルツハイマー型認知症の関与を疑う状態で、軽度認知症かつ後述の抗体薬の使用を検討する場合には、脳アミロイドPETや脳脊髄液検査などを行い、脳へのアミロイドβの蓄積があるかどうかを判断することもあります。
アルツハイマー型認知症の治療法を教えてください。
アルツハイマー型認知症の治療は、大きく薬物療法非薬物療法に分けられます。薬物療法ではドネペジルなどの抗認知症薬が症状の進行を緩やかにします。さらに近年はレカネマブやドナネマブなどアミロイドβを標的とした抗体薬も承認され、根本的治療に向けた選択肢が広がっています。また、薬物以外にも運動・認知リハビリ・バランスのよい食事といった非薬物療法を組み合わせることが推奨されます。
治療によってアルツハイマー型認知症の症状が改善しますか?
現時点で完治は難しいものの、薬物療法で数年間は記憶や日常生活能力の低下速度を緩めることが可能です。また抗体薬は画像上のアミロイド蓄積を減らし、臨床症状の進行を30%抑制したという報告があります。早期に治療を開始するほど効果が期待できるため、疑わしい症状があれば早めに専門医を受診しましょう。

家族がアルツハイマー型認知症になった場合のサポート

家族がアルツハイマー型認知症になった場合のサポート
混乱や怒りがあるときはどう対応すればいいですか?
本人は「できない自分」に戸惑い不安や怒りをぶつけることがあります。否定せず気持ちを受け止めて共感し、環境を落ち着かせることが大切です。「○○が心配なんだね」と言葉を繰り返して安心させ、危険がなければ無理に制止せず見守る姿勢を取りましょう。
忘れてしまうことをどう受け止めればよいですか?
同じ質問が繰り返されても怒らずに簡潔に答え、目に付きやすい所にメモや予定表を貼るなど環境整備でサポートしましょう。失敗を指摘すると自尊心が傷つくため、「大丈夫、一緒に確認しようね」と安心感を伝える声かけが効果的です。
介護する側の心のケアについても教えてください。
介護は長期戦です。家族だけで抱え込まず、デイサービスやショートステイを利用して休息の時間を確保しましょう。地域の家族会や認知症カフェで同じ悩みを持つ方と話すこともストレス軽減に役立ちます。必要に応じてカウンセリングや家族向け教室を利用し、自分自身の健康も守ってください。
アルツハイマー型認知症に対してどのような公的支援制度がありますか?
アルツハイマー型認知症に対しては以下のような公的支援制度があります。

・介護保険サービス(40歳以上で利用可)
・障害年金・精神障害者保健福祉手帳による医療費・税制優遇
・高額介護サービス費や医療費控除など経済的支援
・若年性認知症支援コーディネーター、地域包括支援センターの総合相談 

制度は自治体によって詳細が異なるため、まずは地域包括支援センターに相談するとスムーズです。
要介護認定の手続きを教えてください。
市区町村の窓口または地域包括支援センターで要介護認定の申請を行います。申請は本人のほか家族やケアマネジャーも代行可能です。認定調査と主治医意見書をもとに審査判定が行われ、約30日後に要支援1〜要介護5までの区分が決まります。その結果を受けてケアマネジャーと介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、デイサービスや訪問介護などを利用します。

編集部まとめ

編集部まとめ

アルツハイマー型認知症はゆっくり進行しますが、早期発見・早期治療によって症状の進行を緩やかにし、ご本人が自分らしく暮らせる期間を延ばすことが期待できます。もの忘れや感情の変化に気付いたら、まずは専門医に相談することが第一歩です。診断後は、医療と介護、公的支援制度を上手に組み合わせながら、家族も無理をせず周囲の力を借りて介護を続けていきましょう。社会資源を活用し、周囲が温かく見守ることで、ご本人もご家族も安心して過ごせる環境づくりが可能になります。

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