認知症の薬に副作用はある?薬の種類と代表的な副作用、薬との付き合い方を解説

認知症の薬に副作用はある?薬の種類と代表的な副作用、薬との付き合い方を解説

認知症は記憶や思考能力が低下する疾患で、高齢化に伴い患者数が増加しています。治療にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬が使用されますが、副作用があるため適切な管理が必要です。本記事では、これらの薬の種類と副作用について詳しく解説します。

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認知症の薬の種類と副作用

認知症の治療には、症状の進行を遅らせるための薬剤が用いられます。これらの薬は、病気の進行を完全に止めることはできませんが、認知機能の低下を緩和し、患者さんの生活の質を向上させることを目的としています。

コリンエステラーゼ阻害薬

コリンエステラーゼ阻害薬は、脳内のアセチルコリンの分解するコリンエステラーゼを抑制します。すると、神経伝達物質であるアセチルコリンが増加します。神経伝導を改善することで認知機能を向上させます。

軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に対して主に使用されます。現在、日本で承認されている代表的なアセチルコリンエステラーゼ阻害薬には、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3種類があります。

ドネペジル

ドネペジルは、日本で広く使用されているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬です。軽度から重度のアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症に適応があり、1日1回の服用で効果を発揮します。

副作用として、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、睡眠障害などが報告されています。また、徐脈(心拍数の低下)や致死性不整脈などの心臓関連の副作用が生じることもあるため、心疾患を持つ患者さんには慎重に使用する必要があります。

ガランタミン

ガランタミン(商品名:レミニール)は、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用に加え、ニコチン性アセチルコリン受容体を刺激することで、神経伝達を強化する特徴を持ちます。軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に適応があり、1日2回の服用が推奨されています。

副作用として、消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢)、めまい、食欲不振などが挙げられます。ドネペジルほどではありませんが、心臓関連の副作用があるため、心疾患をもつ患者さんは注意が必要です。また、体重減少や筋力低下が生じることもあるため、高齢者では注意が必要です。

リバスチグミン

リバスチグミン(商品名:リバスタッチ、イクセロン)は、パッチ剤として使用されることが特徴です。貼付薬であるため、消化器症状の副作用が少なく、内服が難しい患者さんにも適用できます。軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に対しても使用されます。

副作用として、皮膚刺激(かぶれ、発赤、かゆみ)、消化器症状(悪心、嘔吐)、めまいなどが報告されています。ほかのコリンエステラーゼ阻害薬と同様に心疾患合併の患者さんには注意が必要です。さらに、脳卒中やけいれん発作が多いとされます。

NMDA受容体拮抗薬

NMDA受容体拮抗薬は、過剰なグルタミン酸の作用を抑制することで、神経細胞の過剰な興奮を防ぎ、認知機能の低下を遅らせる作用を持ちます。

メマンチン

メマンチン(商品名:メマリー)は、日本で唯一承認されているNMDA受容体拮抗薬です。中等度から重度のアルツハイマー型認知症に適応があり、1日1回の服用が可能です。副作用として、めまい、頭痛、便秘、興奮、不眠などが報告されています。けいれんもやや目立ち、もともとてんかんやけいれんの既往がある患者さんは注意しましょう。

また、幻覚や錯乱などの精神症状がまれに出現することがあります。特に高齢者では転倒のリスクが高まる可能性があるため、服用開始時には慎重な観察が求められます。

BPSD(行動・心理症状)の薬の種類と副作用

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)は、認知症の患者さんに多くみられる精神的・行動的な問題を指します。症状には、幻覚、妄想、興奮、不安、不眠などが含まれ、患者さん本人だけでなく家族や介護者にとっても大きな負担となることがあります。

これらの症状に対処するために、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ剤が使用されることがあります。薬物療法を適切に活用することで、患者さんの不安や混乱を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。

抗精神病薬

抗精神病薬は、幻覚や妄想、攻撃的な行動を抑えるために使用されます。代表的な薬剤には、リスペリドン、クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾールなどがあります。これらの薬は一定の効果を示しますが、

副作用として眠気、体重増加、パーキンソン症状(手の震え、筋固縮)などが報告されています。特に高齢者では転倒リスクの増加や認知機能の悪化を引き起こす可能性があるため、慎重に投与する必要があります。使用の際は、最小限の量から開始し、症状の変化を観察しながら調整することが推奨されます。

抗うつ剤

抗うつ剤は、うつ症状を伴う認知症患者さんに使用されることがあります。代表的な薬剤には、ミルタザピン、トラゾドンなどがあります。これらの薬は気分の安定を促し、不安や意欲低下、攻撃性を改善する効果が期待されます。

一方で、副作用として、てんかん発作閾値の低下、緑内障の悪化、心血管疾患の悪化、眠気、口渇、便秘、食欲の変化、めまいなどが報告されています。特にミルタザピンは、食欲増進作用が強く、体重増加を引き起こす可能性があるため、体重管理にも注意が必要です。

また、抗うつ剤の効果が現れるまでには数週間を要するため、焦らずに経過を見守ることが大切です。うつ症状のない認知症に対して、興奮を抑えるために使用する場合は適応外使用である点に注意が必要です。

抗不安薬

抗不安薬は、不安や焦燥感を軽減するために使用されることがありますが、BPSDに対する抗不安薬の使用は適応外使用であり、投与する際は慎重に投与します。代表的な薬剤には、ジアゼパム、ロラゼパム、アルプラゾラムなどがあります。これらの薬は即効性があり、短期間の使用であれば有効ですが、長期間の使用による依存性や離脱症状が問題視されています。

そのため、できるだけ非薬物療法(環境調整、心理療法など)と併用しながら、必要最小限の量を一時的に使用し、長期や定期的に使用しないことが望ましいです。また、高齢者では筋力低下やふらつきを引き起こしやすく、転倒のリスクが高まるため、注意が必要です。

睡眠薬

睡眠薬は、不眠症状を緩和するために使用されます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬ではなく、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を使うことが一般的です。代表的な薬剤には、ゾルピデム、エスゾピクロン、ラメルテオン、レンボレキサントなどがあります。

これらの薬は一時的な睡眠改善に有効ですが、翌朝の眠気やふらつき、記憶障害を引き起こすことがあります。特に高齢者においては転倒リスクが高まるため、慎重な使用が必要です。睡眠薬の代わりに、日光浴や日中の離床といった生活習慣の改善などの非薬物療法を併用することで、より安全な治療が可能となります。

2023年〜2024年に発売された認知症の新薬の概要と副作用

近年、認知症治療の分野では新しい薬剤の開発が進んでおり、2023年から2024年にかけて新たな薬が承認・発売されました。これらの薬剤は、既存の治療薬とは異なる作用機序を持ち、特に軽症のアルツハイマー型認知症の進行を抑える効果が期待されています。
ただし、副作用や適応条件についても慎重に検討する必要があります。患者さんやその家族が新薬について理解し、適切に使用するためには、十分な情報収集と医師との相談が不可欠です。

レカネマブ

レカネマブは、アミロイドβを標的とした抗体医薬品で、アルツハイマー型認知症の進行を抑える効果が期待されています。特に軽度認知障害(MCI)や軽度のアルツハイマー病患者さんにおいて、有効性が確認されています。臨床試験では、記憶力の維持や認知機能の低下速度が従来の治療と比較して緩やかであることが示されました。根治する薬ではなく、およそ半年程度進行を遅くすることができるとされています。

一方で、副作用としてアミロイド関連画像異常が報告されています。脳浮腫を引き起こすタイプと微小出血やヘモジデリン沈着、脳出血をきたすタイプがあり、定期的なMRI検査などによる安全性の確保が必要とされています。

また、投与初期には倦怠感や軽度の発熱を伴うことがあり、これらの症状が重篤化する場合は適切な処置が求められます。新薬の使用にあたっては、患者さんの健康状態を総合的に判断し、主治医との継続的な相談が不可欠です。

ドナネマブ

ドナネマブも、アミロイドβタンパク質を標的とするモノクローナル抗体薬です。この薬は、アルツハイマー型認知症の根本的な原因とされるアミロイド斑の蓄積を減少させることで、病気の進行を遅らせることが期待されています。

臨床試験では、認知機能の低下がレカネマブよりも遅れる可能性が示されました。さらに、患者さんの生活の質の向上が見られたという報告もあります。ただし、副作用は、レカネマブと同様に脳浮腫や脳内出血のリスクが指摘されており、慎重な経過観察が求められます。また、一部の患者さんでは軽度の頭痛やめまいを伴うことがあり、これらの症状が長引く場合は医師の診察を受けることが推奨されます。

認知症に薬は必要?

認知症の薬を服用するかどうかは、患者さんの症状や進行状況に応じて判断する必要があります。現時点では、認知症を完全に治療する薬は存在しませんが、病気の進行を遅らせることが可能な薬剤がいくつかあります。

特にアルツハイマー型認知症においては、薬によって日常生活の維持がしやすくなることが期待されます。しかし、一方で副作用や薬の管理の負担も考慮しなければなりません。患者さん本人や家族が主治医とよく相談し、必要性を慎重に判断することが重要です。

副作用が心配だけど飲むべき?薬との付き合い方

認知症の薬にはさまざまな副作用が報告されており、それを理由に服用をためらう患者さんや家族も少なくありません。しかし、適切な管理と医師の指導のもとで服用することで、薬の効果を最大限に活かすことができます。

また、副作用のリスクを軽減するためには、服用開始時の慎重な観察と、定期的な健康チェックが不可欠です。副作用の程度には個人差があるため、必要以上に不安にならず、医師と相談しながら適切な服用を継続することが重要です。

認知症の薬の副作用が心配なら主治医と相談を

副作用が心配な場合、まずは主治医と相談することが大切です。薬の種類によって副作用のリスクは異なり、また患者さんごとの体質によっても影響が変わるため、適切な薬を選ぶことが重要です。

特に、高齢者の場合は副作用が強く出やすいこともあるため、少量から開始し、経過を観察しながら調整することが推奨されます。また、副作用が出た場合にはすぐに医師に相談し、必要に応じて薬の変更や服用量の調整を行うことが大切です。

服用を決めたら用法用量を守る

また、服用のタイミングを守ることも重要であり、決まった時間に飲むことで体内の薬の濃度を安定させ、より効果的に作用させることができます。薬の飲み方について疑問がある場合は、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

飲み忘れ、飲み過ぎを防止する方法

認知症の患者さんが薬を適切に服用するためには、飲み忘れや飲み過ぎを防ぐ工夫が必要です。例えば、薬の管理を家族がサポートする、服薬カレンダーを利用する、タイマー機能を活用するなどの方法があります。
また、スマートフォンのアラーム機能や、専用の服薬管理アプリを活用するのも有効です。加えて、服薬を日常生活の一部として習慣化することも重要であり、毎日の食事や歯磨きの時間とセットにすることで飲み忘れを防ぐことができます。さらに、定期的に服薬状況を確認し、必要に応じて医師に相談することで、より安全に薬を使用することが可能となります。

まとめ

認知症の治療において、薬は重要な選択肢の一つですが、すべての患者さんに適しているわけではありません。新薬の登場により治療の選択肢が広がる一方、副作用のリスクについても慎重に検討する必要があります。服薬を決めた際には、医師と相談しながら適切に管理し、生活の質を維持するための工夫を行うことが重要です。

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